クライマーズ・ハイ

単純に「映画を見に行こう!」と言って、行ったその場で見ることにした映画。
結論から言うと、失敗。


人の真摯な思い、厭らしさ、エゴ、生活。
ひっくるめた比喩を登山が象徴しているのかな?


鑑賞後に、壮絶な後味の悪さを感じる映画は久しぶり。
職場や仕事内容のリアルさは、僕が映画に求めてるファンタジー要素の一切を排除してたし…
すべてをひっくるめて日本的な映画だと思った。


ドラマにはなってた。
実際、僕は序盤で引き込まれてたし。


でもテレビドラマの枠でもいいように思う。
カメラワークがグルグルしてたのは、演出という名前の自慰にしか感じなかった。
職場が丁寧に描写されてたわりに、構図(人間関係)の説明に終始してたイメージ。
たぶん監督的には、登場人物のやりとりから文学的な読み込みを期待してるんだろう。
で、ものの見事に失敗しているんじゃなかろうか。


僕がアニメの表現手法に慣れてるからかもしれない。
同じ日本人ということで、変にフィルターがあるのかもしれない。
でも、面白いとは思わなかった。
…いろいろな要素を詰め込みすぎ。


主人公の子供が「これを僕だと思って…」といって石を渡してきた後、事故の知らせ。
これって、子供が亡くなるかも…という布石(フラグ)だと思った。
で、それが動機で御巣鷹山を駆けずり回る…みたいな展開かなと。
鑑賞する立場でいうと、単なるノイズ。
最初と最後に出てくることを考えると、親子の絆が全体のイメージ?


主人公がこっそりと事故の犠牲者リストを見て、ひどく動揺した描写があった。
9歳だったかな?
子供と同じ年齢だったように記憶している。
主人公の子供が事故に巻き込まれたか…と思っていたら、どうやら違う様子。
今から考えると、自分の子供と同じくらいの年齢だから痛ましく思っていた…という描写かな。


現実的な描写にこだわりすぎて、観る者の理解力に頼りすぎ。
実際にはあり得ないけど映画の中でなら許される仕草を、もうちょっと使ってもいいんじゃない?


印象に残ってるのは、社長かな。
エロくて、独善的で、寂しがりやで…。
圧倒的な存在感は、俳優(山崎 努)の力量か。


今になって、原作があることを知った。
映画化の話がでて、実際に映画化されているくらいだから、面白いのだろう。
すでにテレビドラマ化されているのも、調べて知った。


で、原作の紹介には、こんな言葉が添えられていた。
「なぜ彼は約束どおり谷川岳に向かわなかったのか」


なるほど!
約束という目線で見れば、映画内容はすべてつながる。
こうなると、御巣鷹山の事故も、親子の交流も、上司と部下の確執も、すべてがノイズとしか思えなくなる。
145分という尺は、余分なものを載せていった結果だな。
新世紀エヴァンゲリオン も、数々の伏線を回収せずに突っ走ってたけど、それよりも理解しがたい作品。


演技は臨場感があってすばらしいと思っただけに、かなり残念。